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自分が体験したこと、自分の頭で考えたことを書きます

北方 謙三の水滸伝(全19巻)のスケールがハンパない。

この作品の凄い所は原典の要素を全解体して人物設定や物語を再構築している点だ。
腐敗した北宋の政治のせいで民が困窮しているという問題のほか、
「塩」の闇取引ルートを資金源として取り込む設定を入れることで
経済的な問題も背景に加えている。
さらにそれを探るCIA的な諜報機関との暗闘が起こり、緊張感のある話が展開される。
こうした政治経済の問題を背景に据えた上で、「この世の不条理」と闘う
梁山泊軍の物語が展開されるのである。

よって、これは原典を単純に翻案したものではない。
中国版の原典は民間に伝わっている説話を方々から集めて作られたもので、全体のストーリには不自然な点も多いらしい。

【第一巻】天罡の星

禁軍武術師範の王進は軍制改革の上申書を出し続けていた。
有力者の息子が私欲をむさぼるために軍の要職に賄賂を使って就く現状を嘆いてのことだ。
禁軍大将の高俅はそれを怒り、王進を脅迫する。
それでも王進は自分を曲げない、そして密かに嘆く。
「名門とは、利権を嗅ぎ分ける血か」

旅をしながら反乱の同士を集める魯智深は王進に反乱への参加を誘う。
禁軍の改革のみならず、宗の国に蔓延する不条理そのものと闘うべきであると。
「いまは一粒の麦に心を傾ける民が、虚しく麦と共に踏みつぶされていく時代ではありませんか」
王進は共感しつつも、一介の武人として職分を離れないとして申し出を断る。

そんな中、ついに王進を捕縛しようとする動きが密かにおこる。
魯智深の同志で、禁軍武術師範代の林冲はスパイ活動を行う中で情報をキャッチ、
王進に母とともに逃げるように伝え、逃亡の手助けをする。

林冲はそのために官軍から嫌疑をかけられる。
辛くも尋問の場をしのぐものの、密かに張られた罠はジリジリと林冲を追いつめていくことになる。

一方、王進は旅の途中で立ち寄った村にて村長の息子である史進九紋竜)という若者と出会う。
腕っ節だけの強さを自尊する史進に、王進は武術の鍛錬を施す。
己の全てをかけた武術を次代の若者に正しく使ってほしいという願いを込めつつ。


革命の胎動はまだまだ始まったばかりだ。
(続き)