omadog-blog

自分が体験したこと、自分の頭で考えたことを書きます

サマーウォーズ ラブマシーンを作った侘助のカタルシスと苦悩


昨日みたサマーウォーズが頭の中に強く印象が残っている。
巨大な仮想空間のOZが現実空間に様々に作用しながら日常生活が営まれている様子が
最近のソーシャルメディア隆盛とダブって面白かった。
なかでも侘助(陣内栄の養子で先代の隠し子)の心情が個人的には興味深くて
文字通り侘しい気持ちにさせられる人物だ。
彼をストーリーの中心に据えるとなかなか面白い構図が見えてくる。



名家である陣内一族と、その当主(栄の夫)の隠し子という血縁的な対立構造。
陣内侘助は生まれつきのアウトサイダーとして栄以外の一族から距離を
おかれてきたことが所々の描写で読み取れる。
さらに陣内家は大半が公務員で現実世界で体制の中で権力をにぎる側である。
中でも婆ちゃんである栄は電話で政治家を動かせるほとで、その最たる人物。
他方で侘助は天才だけど日本社会からはじかれ、一人でアメリカに渡って
風来坊みたいにフラフラ暮らしているという権力構造でも対立している構図がある。


侘助は婆ちゃんは好きだけど一族にはなじめなくて、何とか自分の存在価値を
認めさせたくて学習機能付きのAIプログラム「ラブマシーン」を開発する。
OZ内で暴走した時は自分は無関係だと否定しつつも、内心はその威力に
ホクホク顔だったりする。みたか俺の実力って感じで。
自分を冷遇した一族に自分の実力を認めさせる。
さらに莫大な報酬を婆ちゃん(栄)を受け取らせるという展開で
侘助はカタルシスを得ようとしていたのではないか。
でも長刀で斬りつけられるわ婆ちゃん突然亡くなるわで、彼の魂の浄化はお預けになる。
ちなみに、リアルと密接に影響し合う仮想空間で侘助の分身でもあるラブマシーン
攻撃を仕掛ける対象は現実の社会そのもので、実はその支配を握る最たる者の一人が
陣内栄であり、侘助の大好きな婆ちゃんは同時に自分が嫌っている社会体制の
権化とも言ってよい存在であるという二面性が面白くて、劇中でアメリカ国防総省から
報酬を支払う連絡があった事を栄に知らせる侘助の表情には鬼気迫る勢いがあると感じた。


でもラブマシーンがさらに暴走して現実世界に甚大な被害をあたえうる状況になった時、
侘助は陣内家の一門の者として為すべき務めというのを自覚したんじゃないかな。
その辺は婆ちゃん直伝のマインドが実は根付いていたということで
そして彼は自分の分身でもあるAIの解体を決意し、陣内家陣営の一員として闘う。
どんなに不利な状況でも戦い抜き勝利を得るという陣内家一門としての務めを果たす。
このように侘助は実力の誇示とは別の、もう一段上の枠組みから意思決定する。
婆ちゃんの訃報を聞いて駆けつけてからシレッと陣内一族と同じ食卓を囲んで
飯を食っているシーンなんて、すごく象徴的だと思う。


結果、侘助はラブマシーンの解体に成功する。
一族と力を合わせて現実世界の危機を無事乗り切ることで、栄の深い慈愛にも
報いることができたという感覚を得られたのではないかと思う。
こうして陣内一族に受け入れてもらえた?侘助だが、
同時にそれは実力主義の一匹狼が自分の嫌いな体制側に取り込まれる事でもある。
一門の絆の価値を理解する一方で、天才的な頭脳を持ち実力主義の世界で
生きてきた侘助にとっては、固い絆は同時に強いしがらみでもある。
個人が自由な生き方を選び優れた才能を認めてもらい成功を掴むという
個人主義的な考え方の侘助は、その天才ぶり故にこの思想を捨て去ることは
できないだろうし、彼にとって新たな苦悩の種となるように思えてならない。


家族の古き良き「ムラ」社会的なつながりの価値を認めつつも、
「個」として輝かしい才能を発揮したいというアイデンティティとの相克に
侘助は苦しむことになるだろう。
サマーウォーズ自体は家族のつながりを肯定的に描いているが、
個人という単位で物語を分解してみると侘助の上記のような葛藤も
内包している点が面白いと私は思う。


2時間アニメという尺ではこの辺がどうも未消化で、さらに言うと
侘助の長年抱いていた呪詛はどのように浄化されていったのかという点も
明確な描写がなくて個人的には不満が残る点でもある。
ちなみに我らがTwitterは怒濤の「よろしくおねがいしまぁぁぁぁす!」アタック
でも重くなる事はなかったようで。バルスには一歩及ばずか。


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